オンワードホールディングスは、2020年2月7日に、1月に実施した希望退職募集について413人が応募したと発表した。これは同社の予定数(約350人)を約20%上回った。これは同社の全体の約8%に当たるものだ。今回の希望退職は40歳以上で勤続3年以上の社員(販売職除く)を対象に行われた。退職者には退職金の割増しがある。同社は特別退職金などの費用として2020年2月期に約39億円の特別損失を見込んでいる。
予定を20%上回る退職希望数と言うのもショッキングではあるが、その一方で同日、同社では人事異動の発表があり、廣内武名誉会長(77歳)の5月28日付での最高顧問就任が発表された。最高顧問という聞き慣れない役職が注目されるが、この人事について様々な憶測がなされている。オンワードホールディングスには従来、名誉顧問(馬場彰・元オンワード樫山社長)、特別顧問(5月28日で退任する吉沢正明・前オンワードホールディングス専務取締役兼オンワード樫山取締役専務執行役員管理担当)などの「顧問職」はあったが、今回最高顧問というまさに最高の顧問職が設けられたことになる。
様々な憶測を紹介すると、「オンワード樫山の2代目社長として創業者の樫山純三の跡を継いだ馬場彰氏(84歳)が名誉顧問として未だに社内では君臨しているのが面白くないために、廣内氏が作ったポスト。これで現在社内に部屋を持っている馬場彰氏も居難くなって、出ることにならざるを得ないだろう。廣内氏は馬場氏によって激戦の後任社長レースから選ばれた人物。この負い目からやっと解放されることになるのだろう。廣内氏はもう取締役会などには今後出席しなくなるので、一旦は具体的な社業から引いたように見えるのだろうが、むしろ最高顧問として院政を敷きやすくなるのではないか。重要案件については、事前事後に廣内最高顧問に間違いなく奏上されるのだろう」。廣内氏は代表取締役会長時代には1億5000万円というアパレル会社では破格の年収を取り続けていたが、最高顧問ではさすがにそこまでは無理だろう。
最高顧問というとホンダの創業者である本田宗一郎やその片腕だった藤沢武夫を思い出すが、創業者でもない廣内氏がこの肩書を戴くとはと嘆息してしまう。ましてや、同日に413人の退職希望者の発表が行われているのである。こういう結果を導いた犯人の一人が廣内氏であるのは、本人が一番よく知っていることだと思う。600店を閉め、413人を早期退職させても、オンワードホールディングスに夜明けが来るのはまだまだ先になりそうだ。