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Japan|オンワードはなぜここまで追い詰められたのか?<後編>

Oct 11, 2019.久米川一郎Tokyo, JP
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オンワードの主力ブランド「23区」

オンワードHDは、1990年代に「ラルフ ローレン(Ralph Lauren)」「カルバン・クライン(Calvin Klein)」「ダナ・キャラン(DONNA KARAN)」という当時のいわゆるNY3大ブランドを全て日本で手掛ける企業になった。「一体、3大ブランドを手中に収めてどうする気なんだろう?」と業界では陰口をたたかれたほどだ。まさにオンワードにとっては、我が世の春といった状況だったのではないだろうか。しかし、今ではその3大ブランドは「CKカルバンクライン」を残すだけになっている。2015年の「バーバリー(Burberry)」との契約終了を機に、赤字企業になった三陽商会の例を持ち出すまでもなく、日本のアパレル企業やバッグメーカーは、ライセンス提携企業の日本法人設立&直輸入販売へ移管によって大打撃を受けて来た。オンワードHDもその例外ではなく、上述のように2大ブランドが無くなってしまった影響は小さくなかった。大きな危機が2000年代のオンワードHDにはあったのだ。しかし、国内オリジナルブランドへの切り替えは比較的スムーズに行われた。その代表的な存在がライセンス品を加えると600億円体制を誇る「23区」であろう。「23区」「自由区」「組曲」「ICB」「五大陸」(メンズ)などのオリジナルブランドを構えて、ここ最近ではニュータイプのオーダーで絶好調の「カシヤマ・ザ・スマートテイラー(KASHIYAMA theSmart Tailor)」を加えたラインナップは強力だ。オンワードはちなみにライセンスブランドとしては「CKカルバンクライン」「ポールスミス ウィメン」などを擁する。アメリカントラッドブランド「Jプレス(J.PRESS)」はすでに本体を1986年に買収している。「ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)」「ディーケーエヌワイ(DKNY)「ダナ・キャラン」が消えるという深刻な危機はオリジナルブランドへの移管で切り抜けたものの、最近の不振の根源はどのあたりあるのだろうか。

オンワードHDの基本戦略は百貨店チャネルでは同業他社の疲弊を待って、シェアの自然増を狙うというものである。この間に、多角化や百貨店以外のチャネル(ショッピングセンター、Eコマース、海外販売)の伸長を待つ。しかし、この基幹の百貨店チャネルがすでに飽和してしまって、現状維持が難しくなったというのが予想外の事態。同業他社がいなくなるのはいいが、その売り場をもらうようなブランドがオンワードHD内にもなくなってしまったということなのだろう。すでに、百貨店内では無理にシェアを広げても、利益が出なくなっているという事態に直面して、今回不採算店閉鎖、不採算ブランド休止を決定したのだろう。今回の600店閉鎖は、「オンワードのブランドがなければやっていけない」(主に地方の)百貨店との訣別宣告でもある。もう他人の都合を顧みる余裕はないというところまで追い詰められているのだ。前述したように遅れの目立つショッピングセンター・チャネルへの進攻、海外戦略、多角化というのがポイントになってくるだろう。特に多角化は遅れが目立つと同時に中途半端だ。本業(アパレル事業)で成果が出せなかった人材が多角化要員になっているように思われるが、むしろ逆だろう。最優秀クラスの人材が多角化を推進して連結の売上高の半分を占めるぐらいにならないと、低迷の打破は難しいだろう。もう百貨店チャネルには期待できないのだから。

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