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Japan|オンワードはなぜここまで追い詰められたのか?<前編>

Oct 10, 2019.久米川一郎Tokyo, JP
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オンワードの主力ブランド「23区」

 オンワードホールディングス(以下オンワードHD)の苦境が新聞で大きく取り上げられている。「600店閉店」「低採算ブランド廃止検討」「韓国から撤退」などなど。業界を代表する大手アパレル企業と言えば、オンワードHD(2019年2月期連結売上高2406億円)とワールド(2019年3月期連結売上高2498億円)の2社ということになるが、最近好決算を続けているワールドに比べ、オンワードHDは利益水準ではその3分の1程度という大差をつけられている。何が両社の明暗を分けたのだろう。

 オンワードHD保元道宣社長、ワールドの上山健二社長が社長就任したのは同じ2015年。やはり大手アパレルの1社であるTSIホールディングス(サンエー・インターナショナルと東京スタイルが合併)でも齋藤匡司氏が同年社長に就任した。いずれもオンワードHDは廣内武会長、ワールドは寺井秀藏会長、TSIホールディングスは三宅正彦会長というビッグボスが後ろ立てについて、それぞれ経済産業省出身の保元社長、住友銀行からカーチスホールディングス、英会話のGABA、ぐるなびなどの企業を経た上山社長、日本ロレアルやシャクリージャパンなどを経た齋藤社長という「アパレル業界外」からのスカウト人事だった。すでに齋藤氏は退社し古巣の日本ロレアル副社長に就任している。オンワードHDの保元氏は上記のように苦戦中ということで、ひとり上山社長の手腕の確かさだけがクローズアップされてしまうが、オンワードHDの現在の苦境にはさまざまな要因が重なっているようだ。

 最近も繊研新聞の第一面でGINZA SIXに「モロー・パリ(MOREAU PARIS)」のポップアップストアの記事が紹介されていた。オンワードグループのメゾンモロージャパンが輸入販売する「モロー・パリ」の期間限定店だ。オンワードはこの他にも、マルベリージャパン、ジルサンダー本体などを傘下にもっている。しかし、いずれの業績も今ひとつで本体業績への貢献はほとんどない。運が悪いのか、目利きがいないのか、海外ブランドで当たりが出ていない。大手アパレルとして、ラグジュアリー・ブランドを傘下に持つのは悲願といってもいいのだが、2005年にロンドンのセレクトショップ「ジョゼフ(JOSEPH)」を買収したのに続き、遂に創業デザイナーのジル・サンダー(Jil Sander)がクリエイティブディレクターをしていた「ジル・サンダー(Jil Sander)」を300億円(為替レートの変動で円換算すると250億円〜350億円の幅がある)かけて買収したのは2008年。オンワードはパリでは「バスストップ(BUS STOP)」というセレクトショップを買収し、イタリアではアパレル会社ジボコーを買収するなど、欧米におけるネットワークは日本企業として群を抜いた歴史と広さ・深さを誇っているが、それが業績に反映しないどころか、むしろ足カセになっているというのは、オンワード経営トップを切歯扼腕させていると思うが、その原因は何なのだろうか。簡単に言えば真にグローバルな企業体になっていないということなのだろう。あくまでも、日本市場を有利に運ぶための「海外事業」という発想から抜け出ていないのである。極端な話、本社を日本橋からパリに移すぐらいの不退転の決意がないと、グローバル企業として、海外ブランドを大きく花開かせることは難しいのではないだろうか。

<後編>に続く

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