米国のナイキ(NIKE)は9月19日、エリオット・ヒル(Elliott Hill)が10月14日付けで社長兼最高経営責任者(CEO)に就任すると発表した。現社長兼CEOのジョン・ドナホー(John Donahoe)は、10月13日付けで退任する。取締役会も退会するが、引き継ぎなどの業務のため、2025年1月31日までアドバイザーとして留まる。
ナイキのマーク・パーカー(Mark Parker)会長は、「エリオットをナイキに再び迎えることができ、大変嬉しく思う」との談話を発表している。社長兼CEOに就任するエリオット・ヒルは、「ナイキ エアマックス1」が発売された翌年の1988年にインターンとしてナイキでのキャリアをスタート。
その後、「ナイキ(Nike)」と「ジョーダンブランド(Jordan Brand)」のマーケディング部門などを統括してきたが、2020年に退職している。退職以前は、19もの異なる役職を歴任し、ナイキのヨーロッパと北米で上級管理職を務めてきた。32年にわたってスポーツ業界最大のブランドを運営してきたベテランが4年ぶりに復帰する。
普段からランニングやハイキング、フライフィッシングなどを楽しんでおり、私設の野球チームでは野球もプレーしているというエリオット・ヒルは、ナイキの社長兼CEOの就任に際して、「才能あるチームとともに、大胆で革新的な製品を届ける」と語っている。
ナイキは、6月27日の決算発表時に2025年5月期の売上高が1桁台半ばのマイナス見込みになることを示すと、「ナイキ」の製品への需要低下への懸念が強まり、株価が大幅に下落。ナイキの株価は、決算発表当日の94.19ドルから翌日には75.37ドルと20.0%もの大幅安となった。
ジョン・ドナホーは、競合として台頭してきているスイスの「オン(on)」や米国の「ホカ(HOKA)」などを念頭に、「私たちのチームが競争上の優位性を発揮し、事業に大きなインパクトを与えていると確信しています」とコメントしていたが、この株価急落をきっかけにジョン・ドナホーの経営手腕に対する懸念が急速に拡がっていったようだ。
インターンから世界最大のスポーツブランドのトップへ就任という、まさにアメリカンドリームを体現したエリオット・ヒルに大いに期待したい。