アパレル大手のファイブフォックスの創業者で会長の上田稔夫(うえだ としお)氏が5月2日に死去した。享年81だった。葬儀、告別式は近親者で執り行った。
上田稔夫会長は、1944年3月22日に愛媛県で生まれ、三愛、鈴屋を経て、1976年にファイブフォックスを創業した。同年に基幹ブランドとなる「コムサ・デ・モード(COMME ÇA DU MODE、現コムサ)」を立ち上げ、1号店を北海道・札幌に出店。1981年には「ペイトンプレイス(PEYTON PLACE)」を立ち上げ、DCブームを牽引し、最盛期には約100店舗を展開していた。
上田稔夫氏がファイブフォックスを創業した1976年は、青山に「ベルコモンズ」が開店し、東急ハンズが創業するなど、小売業界が活発な時代だった。マイホームを持ち、ファッションや趣味などに敏感な「ニューファミリー」と呼ばれる層が注目され始めるのもこの時代だった。上田稔夫氏は、こういった時代の流れや空気感を敏感に感じとり、「コムサ・デ・モード」を70〜80年代を象徴するブランドに磨き上げていった。
1990年代に入ると、DCブランドからの脱却を目指し、企画から生産、販売までの機能を垂直統合したビジネスモデル、いわゆるSPA(Speciality store retailer of Private label Apparel、製造小売業)方式へいち早くシフトチェンジしていく。その後は、生活雑貨やカフェなどライフスタイル領域にも事業を展開し、まさに時代の先を読む才覚に長けた経営者だった。
ファイブフォックスは2023年8月期末時点で社員数は1,750名、店舗数は430店あり、ピーク時の売上高は約1800億円を超えるなど、一代で同社を育て上げた上田稔夫氏の辣腕ぶりが偲ばれる。